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DX事例

届出は入口にすぎない — ICT配置基準(AI加算)で、あとから問われること

MEDICT では、医療機関の届出実務と現場運用の接点を、一次資料をもとに整理してご紹介しています。

令和8年度診療報酬改定で、医師事務作業補助体制加算1・2に ICT機器を活用した配置人数の算入方法に係る基準 が新設されました。一般に「AI加算」と呼ばれることがありますが、これは通称です。

新設の基準は、どうしても届出の準備に目が向きます。しかし実務でつまずくのは、その先です。

まず、制度の骨格

「1.2人」「1.3人」が意味すること

医師事務作業補助体制加算の配置区分は、病床数 ÷ 補助者数で決まります(15対1 が最も手厚く、100対1 が最も薄い区分です)。

ICT機器を活用した要件を満たすと、補助者1人を1.2人として、さらに要件を満たすと 1.3人 として算入できます。

たとえば 300床・補助者17人の場合。

ICT算入なし17人 → 20対1(15人以上)は満たすが、15対1(20人以上)には届かない
1.2人で算入17 × 1.2 = 20.4人分15対1 を満たす

人を増やさずに、配置区分が変わり得る——これが制度の効き方です。

逆に、退職等で人数が減ったときに現在の区分を維持しやすくなるという使い方もあります。

導入する機器と、満たすべき条件は別のもの

ここは読み違えやすいところです。①〜④は導入する機器ア〜エは満たすべき条件です。

導入する機器
生成AIにより、退院時要約・診断書・紹介状等の原案作成を自動化する文書作成補助システム (必須)
医療文書用の音声入力システム(汎用の音声入力機能を除く)
定型的な入力作業等を自動化する RPA
10種類以上の患者向け説明動画
満たすべき条件
①を含む機器を組織的に導入し、大半の医師・補助者が日常的に活用していること
医療情報システムと連動するものは3省2ガイドラインに準拠していること
AI技術を用いるものはAI事業者ガイドラインに基づくリスク対策を講じた事業者の提供であること
全ての補助者に操作方法と生成AIの適切な利用に関する研修を実施し、常時使える体制を整備していること

ア〜エをすべて満たすと 1.2人(オ)。加えて②〜④のうち1種類以上を「広く活用」していると 1.3人(カ)です。

⚠️ ①以外は必須ではありません。 1.2人であれば①だけで要件を満たせます。RPA や動画は、1.3人をめざす場合の選択肢です。

このほか、届出の前に直近3か月以上、ICT算入によらず現行の配置区分を算定していることが前提となります。

適時調査で、実際に指摘されていること

ここからが本題です。

ICT配置基準は令和8年度の新設であるため、この基準についての指摘事項はまだ公表されていません。しかし、医師事務作業補助体制加算そのものについては、地方厚生局が毎年度の指摘事項を公表しています。

以下は、東北厚生局「令和6年度 適時調査における主な指摘事項」からの引用です。

(1)医師事務作業補助者を新たに配置してから6か月間に 32 時間以上行うこととされている基礎知識を習得するための研修について、6か月以内に修了していない事例、一部研修項目が不明な事例が認められたことから、改めること。

(4)電子カルテシステムについて、院内規程が整備されていないことから、整備するよう改めること。

(6)医療機関内における電子カルテシステム(オーダリングシステムを含む。)における各入力項目についての入力権限、許可権限が分かる一覧表等を作成すること。

医師の負担軽減体制(様式13の4)についても、次のような指摘があります。

② 保険医療機関内に、多職種からなる役割分担推進のための委員会又は会議を設置していることが確認できないため、議事録や設置要綱等の記録を整備すること。

⑤ 多職種からなる役割分担推進のための委員会について、管理者は年1回以上出席する必要があるが、出席していないことから、出席するよう改めること。

指摘されているのは「記録」です

引用した5件を並べると、共通点が見えます。

指摘何が問われたか
32時間研修が6か月以内に修了していない・一部項目が不明研修をやったか、ではなく期限内に終わった記録と、何を学んだかの記録
電子カルテの院内規程が整備されていない運用はあるが、規程という文書の形になっていない
入力権限・許可権限の一覧表を作成すること権限管理はしているが、一覧表という形で示せない
委員会の設置が確認できない実質的に会議はあるが、設置要綱と議事録がない
管理者が委員会に年1回以上出席していない出席したか、ではなく出席の記録があるか

要件を満たしていても、それを示す記録がなければ指摘を受けます。

そして ICT配置基準は、記録を求める要件の塊です。

  • 全補助者への研修と、その実施内容の記録
  • ICT機器の日常的な活用(疑義解釈は「医師又は補助者の過半数が毎週使用」を目安としています)
  • 導入前後の業務内容・業務量・業務時間、医師の事務作業時間・負担感の年1回程度の評価
  • その結果の衛生委員会等での確認

同じ形の指摘が起こりうる構造です。

届出の準備段階で、決めておきたい3つ

① 利用ログが、利用者を識別した形で出せるか

疑義解釈の目安は「医師又は補助者の過半数が毎週使用」です。これを示すには、件数の合計ではなく誰が使ったかの記録が要ります。分母も分子も、利用者を識別できなければ出せません。

システムを選ぶ段階で、利用者ごとの使用実績を出力できるかを確認しておく価値があります。

② 入力権限の一覧表は、早めに情報システム部門へ

これは様式18 の添付書類でもあります。情報システム部門にしかなく、届出の担当者が把握していないことが多い資料です。作成に時間がかかるため、準備を始めた時点で確認しておくのが安全です。

③ 導入前の数値は、導入前にしか取れない

通知は「導入前後における…評価」を求めています。稼働してしまうと、導入前の業務量・業務時間は遡って測れません。

⚠️ 稼働直前は準備業務で現場が繁忙になり、平常時の数値が取れません。稼働の2か月前までに測っておくことをお勧めします。

3省2ガイドラインは第7.0版になっています

要件イに関わる点を1つ。

厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、令和8年6月に第7.0版が公表されています(企画管理編は同年5月)。第7.0版から、根拠法にサイバーセキュリティ対策基本法が追加されました。

院内の規程が第6.0版を前提に整備されている場合、版の対応関係を確認しておく必要があります。

なお同ガイドラインの企画管理編は、方針 → 規程 → 規則 → マニュアルという文書体系を示していますが、生成AIに特化した記述はありません。文書体系の整備は求められる一方、その中身は各医療機関が自ら定めることになります。


MEDICT では

医師事務作業補助体制加算の ICT配置基準について、届出に必要な「システム以外」を一式でご用意しています。研修資料(投影用スライド付き)、受講記録の様式、年次評価レポートの雛形、生成AI利用に関する取扱規則の雛形、届出様式の記入・添付ガイド、適時調査の想定問答、そして研修受講と配置を管理する台帳です。

また、必須要件である①のシステムそのものも開発しています。退院時要約・診療情報提供書等の原案を、院内に設置した Mac 1台のみで作成し、医療情報を外部に送信しない構成です(現在開発中)。

ご相談はお問い合わせから承ります。

ℹ️ 本記事は 2026年8月時点の告示・通知・疑義解釈および公表資料に基づいて整理したものです。 引用した指摘事項は、東北厚生局「令和6年度 適時調査における主な指摘事項」によります。 指摘事項は各地方厚生局が公表していますので、所管の厚生局の最新版もあわせてご確認ください。 本記事は基準への理解を助けることを目的としており、加算の算定を保証するものではありません。 届出の可否は地方厚生(支)局の審査によります。

関連キーワード(AI 抽出): #医療DX #診療報酬 #医師事務作業補助体制加算 #施設基準 #適時調査 #生成AI

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